名作を忘れないように。

振り返り用コンテンツ備忘録

生きていく理由/喜びを【Dreamin' Her - 僕は、彼女の夢を見る。- が面白い】

エグい、や、パない

クラウドファンディングで制作された作品。2500円ぐらいのところセールで1700円で買えた。
「Dreamin’ her」、このタイトルも終わった今となってはおんおんしみじみ心に来ちゃうんだからこれは名作でありましょうと
お手頃価格でこんなに満足出来る超良質なコスパ、ガチャや課金に慣れ切ってしまった自分の体に染みわたるネ…

2022年7月9日プレイ

 

 

 

 

ストーリー

主人公とヒロインは物心ついた時からの幼馴染だった。「一生一緒だよ!」といった約束を交わすほどの仲であったが小学生も終わる頃にヒロイン一家が今の家より少しだけ遠くの場所に引っ越してしまい段々と疎遠に。



高校生になって再会した二人はようやく距離を少しずつ戻していくが、主人公は受験勉強漬けの日々や母親からのプレッシャーに大きなストレスを感じてしまいヒロインに依存していってしまう。
ある日意を決して主人公はヒロインに告白するが、明らかに両想いなのになぜか振られてしまい絶望する。明らかに両想いなのに
そんな主人公の夢に突如として現れたヒロインそっくりの女の子。自分の深層心理もここまで来たかと呆れる主人公だけど次第に夢に安らぎを感じ今度はこっちに依存していってしまう。

って感じのストーリー。まぁ正直なんかどこかで見たような既視感ある設定だと思うけど絵とか心理描写がちゃんとしているので個人的には好感触。言うても具体的にこの作品に似てる!とか無いしね。

 

登場人物

五十嵐蒼(あおい)CV:なし

ハリポタじゃん!って思ったら直後に作中でもからかわれたって地の文が出てきて(あ、ごめん……)ってなった

主人公。幼いころに事故に遭って額に傷があるし事故のせいで記憶が曖昧。幼稚園では突き飛ばされ小学校では突然クラスメイトに殴られとそういう悲しき思い出が強く残ってるせいか酷くひねくれてる性格。ちなみにメガネキャラ
趣味は小説書き。中学生の頃「なろう」的なサイトで1万PVを達成したみたい、よく分からないけど多分凄いんだと思う。万だし。
でも最近は小説の書き始めが思い浮かばなくて満足に趣味を楽しめない…
しかもママからは勉強しろ内申に響くからちゃんと朝起きろ将来のキャリアの為に良い大学に行けとプレッシャーがかかりまくって参っちゃうね。
そんな中で久々に再会した未来と少しずつ距離を詰めていく。未来は癒しだ…でも告白したら振られちゃった…そしたら夢の中に未来が!?ああ夢は癒しだ……
だいぶ精神やられちゃってます。でも多分しょうがないんだよな、ここまで追いつめられるような教育を与えるママも悪いと思う。とはいえそれはそれとして捻くれた性格してるからエンディング後の大学生活や社会人生活では治ると良いね。まぁ治るでしょ。ママも根は子のことを考えてくれてる良い人だもん

七瀬未来(みらい)CV:村上奈津美

ヒロイン。超良い子。
主人公とは中学生の間は別の学区だったこともあって疎遠になっちゃったけど高校は一緒になったのでようやく距離を戻せると喜んだ。
だけど3年生になるまではいまいち気まずくて何も出来なかった。でも残り一年の高校生活、悔いは残したくないと奮起して主人公に猛アタック、おかげさまで無事に物語が始まりました。うちのヘタレ主人公にアタックしてくれてありがとね。
剣道と合気道を修めてる。たぶん強い、なんでかっていうと紀伊国屋がビビってるから。
主人公のママから合鍵を貰ったり朝起こしに来てくれたりと完全に親公認の幼馴染しぐさ。流石幼馴染はんは距離の縮め方がお上手でよろしおすなぁ。
でもこのゲームを終えるとこの子が本当に本当に良い子だって再認識する。うちの主人公の事を好きになってくれてありがとう。

紀伊国屋将 CV:浦田わたる

主人公の後輩。どういう名前だよって最初思ったけどどうやらこのゲームを作っているLife0の過去作品からのキャラらしい。あ~なるほどCHARONの雪丸的な感じね、スターシステムではなくて本人だからちょっと違うけど。

でも紀伊国屋ってちゃんと実在する名字なんだってね。世の中は広いわ

情報通でおちゃらけてるキャラ。絵に描いたような恋愛ゲームの親友ポジションやないかい。
結構怪しい言動などはあったものの終わってみれば良いやつだったなって。というかこいつがいないと作品の雰囲気が一段暗くなっちゃってた気がする。

五十嵐桐子 CV:藤田昌代

ママ。それもバリキャリの教育ママ
本人が大学に行ってなくて色々差別されたりで苦労したからか主人公にはそうなって欲しくないとゴリゴリに勉強に口を出す。どれだけゴリゴリかというと主人公がヒロインとカフェに行くからとわざわざ外出許可を貰うほど。しかも許可したのに当日の13時には「まだ帰ってきてないの?」とメッセージを飛ばしてくる。いや流石にそれはアカンよ…
でもね、本人としては子供に苦労することなく生きていってほしいって心から願ってるってこと、ぼくには分かります。
昔自分も高校生になってバイトを始めてからどれだけ親が偉大なのかを知ったからね。自分の為じゃなく他人の為に稼いだお金、それも数百万数千万の額を使ってくれるなんて本当に頭が上がりませんよ。パパママ育ててくれてありがとう。
この桐子ママも主人公の為に毎朝起こしてくれたり予備校に通わせてくれたりと本人的には子供のためにと行動してくれてるのは間違いない。んだけど主人公の”小説家になりたい”って夢に開口一番「どうやって生活していくの」とか言うのは親として良くないよね。親は子供の夢を尊重しなきゃいけない、てかこれは親子とか関係なく人としてですが。尊重したうえで現実的な視点からも話をしてじっくり考えていこうと話さなきゃあきまへんよ。

たぶん人によっては本当に許容出来ない、いわゆる毒親って判定をされるようなキャラだと思う。幸い幸せに育てられた自分としては、子供を本当に大事に思ってくれていることが感じ取れるし読み取れるからいつか主人公が大人になった時に本当に分かりあえる日が来ると思ってる。
人の家庭は千差万別星の数ほどあるから中々難しいですねぇ。

ちなみに夫、つまり主人公パパはなんか仕事でカンボジアに飛ばされてるらしい。

あと怒った時くっそ怖い。藤田昌代さんの演技が光りすぎている。

七瀬愛(めぐみ)CV:近藤唯

ヒロインママ。おそらく作中で一番の聖人
おっとりしてるけど確かな芯を持った理想的なママ。
8年ぶりくらいに会った主人公の事を温かく迎えてくれて、しかも当時の主人公の好みも覚えててくれて、更にはつらい時に優しく諭して励ましてくれる。おまけに顔も良ければスタイルも良いってなんだこれは。
ひねくれまくった主人公がどれだけ優しい人たちに見守られて生きてこられたかが分かる人その一。
なお桐子ママとはちゃんと友達なので主人公とヒロインが疎遠になった時も桐子ママとは連絡を取り合っていたので近況はしっかり知っている。
紅茶には「お」を付けてお紅茶と呼ぶタイプ。

七瀬俊之 CV:髙坂篤志

ヒロインパパ。おそらく作中で一番の聖人(二回目)。や、マジで良い人なンすよ
めちゃくちゃ明るくて主人公の事も常に気にかけてくれる。久々に会った主人公とも気兼ねなく話せる豪傑っぷり。
社会人としてしっかり働き、妻を持つ夫としてハンバーグを焦がしてしまった妻を「美味しいよこれ!」と気遣い、子供を持つ父として家庭を明るく盛り上げてくれる。こんな素晴らしい人格を持った人を聖人と呼ばずして何と呼ぶのでしょうか。
ひねくれまくった主人公がどれだけ優しい人たちに見守られて生きてこられたかが分かる人その二。
最後の最後で主人公の為に会社を早退してくれて更に株を上げてくれた。大好きなキャラだ。

結束刹那 CV:湯浅かえで

主人公が内輪のグループラインで、友達の彼女(後輩)が声優目指すって言ってるって発言に対してなれるわけないじゃんって空気の読めないリプライを送ったらなぜか本人にスクショが回ってしまってそれにブチぎれてカチコミをかけにきたのが後輩ちゃんの友人であるこの子。いやごめん、誰?
一瞬しか登場しなかったので正直個人的にはよく分からなかったけど「お前…歪んでるよ…」って発言はチクチク言葉となってしっかり主人公に刺さったのでした。
まぁ友達想いなのは良いよね。でも閉鎖的な空間での発言を勝手に晒されてそれにキレてくるのはちょっとね…主人公も悪いっちゃ悪いけどまずは晒したやつをシバこう。ちなみに晒したのは後輩ちゃんズを嫌ってるモブ女子(内輪グループ内にいる男子の彼女)だったらしい、もうワケわからん

 

海老原先生 CV:拝真之介

主人公のクラスの担任。準モブです。準モブなので立ち絵がありません、スチルもありません。
けだるげな感じだけどめちゃくちゃちゃんと生徒の事を見てくれる気にかけてくれる良い先生。必要とあらば生徒を守るためにとっさにでも教師生命を賭けてくれる。本人的には「生徒を守るためにクビになるならそれはそれで良いんじゃね~の」らしい。漢過ぎて俺は泣いた

 

 

架子 CV:村上奈津美

突如として主人公の夢の中に現れた謎の白い未来。主人公的には深層心理だと思ってる。
白い未来─とか夢の未来─とか呼んでたけど本人の希望で「架子」って名前に。未来との対比ね。
主人公の事を常に気にかけてくれる、当然です夢ですから。主人公の不真面目な言動などにはしっかりとお叱りの言葉をくれる、当然です夢ですから。
いや心理カウンセラーとして完璧じゃないですか?
主人公も夢の中ならと存分に言いたいことを言ってイチャコラ出来るもんだからどんどん依存していくけど、架子はそれを受け入れることなく適度に叱ってくれる。ええ子やで…

俺はお前が一番好きだ。幸せの道へ続くファンディスク、一生待ってます

 

音楽(この記事の本質)

このゲームは低価格中ボリュームながらもしっかりと音楽を創っている。
劇伴はピアノをメインに不穏な場面では然るべき雰囲気の曲が使われていて良かった。(音楽無知によるふわっとした感想)

でもぶっちゃけそんなのは二の次で本当は主題歌がすご~~~~~~~く良いってことを書きたい。
「おやすみモノクローム」って曲。

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Isletっていうユニットが送るこの曲がもうつえ~んだ。
POPながらも不思議感があるっていうの?切なさを感じられるっていうの?やば、こんなふわふわしてた感想書いてたら本当に音楽無知なんだって気付かれちゃう。
元々このゲームって絵とIsletを目的に買ったんだよね。たまたま1年ぐらい前にチャンネル登録してて良い曲作るのぉ~って思ってたから。
Islet、これから伸びます。ぼくは古参ぶります。

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今見たらチャンネル登録者6.6万人で笑った。もう伸びてるやないかい。

でもこの曲の強さはそれだけじゃないんす。詳しくは後述するけども、このゲームの一番良いところは曲よ。俺はそう思う

そうだあと、ニコニコで「みんなのギャルゲ/エロゲ音楽」って投票企画があるんだけどこの曲も投票対象でたぶん上位に入ると思う。なお自分はこの企画に気付いたのが7月5日とかで投票しそびれた。慟哭した。

 

絵はかなり良いと思う。シンプルに可愛い。

躍動感〇

原画みこ

彩色白恵りえ

だそうです。奇跡的にどちらの先生もTwitterヒョローしてたからまぁこのゲームの絵に釣られたのは道理だったね。

 

 

 

 

 

 

【ここからネタバレあり】

感想

王道です。王道のストーリーなんだけど細部が丁寧だったらそれは名作なんだよな…

未来のほかにもう一人幼馴染がいた、実は双子だったっていうのはまぁ予想しやすいかなと思う。(なお自分は予想しきれなかった模様、一緒にプレイしてた友人はちゃんと察してました。)

というわけで架子もとい紡凪、良い子にもほどがあるって…俺こういうのに弱いんだ。
主人公もかわいそう過ぎる、目の前で大好きな幼馴染が死んでいくのを見届けるのは流石に心が壊れてもおかしくない。だからこそ記憶に蓋をした主人公を気遣って何年も生活し続けたママや七瀬家の優しさに涙するんだ。

にしてもこのゲームは結構伏線の張り方が上手いなって思った。上で使った「だぁ~れだ!」してるやつだって今見返したら泣けるし、主題歌の「おやすみモノクローム」ってタイトルも意味があることが分かるし、七瀬家の背景に写真が二つ並んでるのもそういうことだもんな。
まぁ分かりやすいっちゃ分かりやすいんだけどこういうので良いんだよこういうので。考察しながらプレイできるから、それが楽しいんだから。

 

エピローグで色々な人との後日談があるのも良い。主人公と親の距離は確かに少しずつ縮まっていっているし、七瀬家も本当の意味で主人公を迎えられることが出来た。てかやっぱり七瀬家は聖人の集いだね…自分が主人公ならみんなでおんおん泣くと思う。だってようやく紡凪を真に偲ぶ事が出来たんだもんね。

終わり方も秀逸というか主人公が小説を再度書けるようになったのはなるほど確かに夢日記付けてたもんなって。
最後の最後に紡凪が歌っていたのはあれは高校3年生の時期なんだろうか、それとも直前の時系列である大学生のタイミング?
自分は後者が良いな、数年ぶりに夢で再会してほしいよと切に願うばかり。
敢えてどちらにも取れる描写を残してくれて感謝しかありません。想像の余地があるのは良いこと。
でも紡凪と七瀬家が再会出来ないのは仕方ないけど悲しいよな。そう考えると死後の世界はあったら良いなって思う。やっぱり救いがないと、それで言うなら最初から事故にあわなかった世界線があっても一向に構いませんわよ(ハピエン厨)

 

あと村上奈津美さんの演技が素晴らしかった。ぼくは村上奈津美さんはアイカツとニジガクとアズレンぐらいでしか知らないのですがこんな正統派ヒロインも上手く演じられるのかって驚いたし泣き演技もめちゃ上手かった。評価がうなぎ上り。

 

塞ぎこんでしまった主人公、理解ある周囲

上述したように主人公は幼い時のショッキングな事故で記憶障害を起こしてる。
それから捻くれた性格になったのは間違いないけど、それに対して周囲の理解が凄すぎる。主人公ママも七瀬家も果ては情報通の紀伊国屋も紡凪の存在を隠し通してくれていた。
理解ある周囲に助けられて(果ては夢・非現実な存在にも助けられて)生きる意味を、喜びを主人公が見つけるのがこのゲームのテーマ、最終的に”みんなで手と手を取り合って幸せになっていこう、辛いことはたくさんあるけれどそれでも前を向いて生きていこう”で締めくくったこのゲームは本質的に元気をくれるゲームなんだろうね。

別れはボーイミーツガールの醍醐味だけどつらくもあるよね



 

主題歌のメッセージ性の強さ

ぶっちゃけ自分が一番気に入っているのが主題歌と物語のリンク感の強さ
個人的にはノベルゲームを評価する時の軸は話・絵・音楽・UI(・演技)だと思っていて、特に音楽の要素は大きい。実は音楽から入るゲームもちょくちょくあるから。
じゃあそういう軸で見るとこの作品はどうか、結論から言うと完璧です。
主題歌(おやすみモノクローム)が強すぎる。Isletが好きなので元々曲として好きだったんだけどこのゲームをクリアして聞き返すと歌詞がどれだけ物語とリンクしているかが分かる。歌詞の意味が全て分かる。
誰の視点で歌われた歌詞なのかあのキャラはあの場面でどんな気持ちでいたのか。もうね、ぶっ刺さり。

「おはよう、あおくん」って発言にどれだけの感情が込められていたのか

あの夢はどれだけの奇跡だったのか

「せめて私を過去にして」無理に決まってるが。こんなの一生引きずるが。

本編もかなりウルッと来たんだけどまさか終わった後に本チャンの泣きが来るとは思わなかった。クッッッッソ泣いたもん、嗚咽したもん。とんだ伏兵がいたもんですよ本当に。

 

本編をプレイした後にOPをもう一度見るのを、おやすみモノクロームをもう一度聴くのを強くオススメします。
だから何度でもリンク貼るよ。歌詞は概要欄に書いてあります優しいね。

www.youtube.com

 

総括・評価

紛れも無い名作。プレイヤー目線だと主人公は明らかに周囲に恵まれているって分かるんだけど主人公は気付かない。現実の多数の人たちよりも夢の中のたった一人に助けられていくのが対比になっている感じがした。

桃色の海、星の輝く空、どこまでも非日常だけど美しい

シナリオ  :50/10

キャラクター:20/10

音楽    :100/10

イラスト  :20/10

雰囲気   :10/10

演技    :10/10

合計    :210/60💮💮💮

オススメ度 :★★★★★★★★★(星9)

 

後味もすっきりとしていてこれからを頑張ろうって気分にさせてくれるポジティブなゲーム。開発のLife0は自身の送るゲームには「どこか不思議」を大事な要素としているらしい(CampFireのサイトに書いてあった
ちゃんと表現できていました、「どこか不思議」。ありがとうございます

とにかく綺麗にまとめられている上に5,6時間で終わるのであまねく全人類やってほしい。

次回以降のLife0作品がクラウドファンディング始めたら支援したいな。

 

商品リンク

公式サイト

life0.info

 

Steam

store.steampowered.com

 

Booth

life0.booth.pm

 

おやすみ。